不動産投資のランニングコストの目安はいくら?
費用の一覧と削減対策を紹介

不動産投資を始めた場合、費用がかかるのは最初だけでなく、不動産の取得後も運用していくためのランニングコストがかかります。
ランニングコストの代表例は、入居者募集費用、修繕費用、保険料、管理委託費、各種税金などです。
ランニングコストを理解し、削減することによって不動産投資のパフォーマンス向上を期待することができます。
この記事では、不動産投資のランニングコストの基礎知識、項目別の目安と削減のコツなどを詳しく解説します。
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目次
不動産投資のランニングコスト(RC)とは?
不動産投資では、不動産の建築や購入に一定の費用がかかり、取得後の賃貸経営にもさまざまな費用がかかります。
不動産の取得時にかかる費用をイニシャルコスト、不動産の維持にかかる費用をランニングコストといいます。
ランニングコストを英語表記すると「running cost」であり、頭文字をとってRCと表現することもしばしばです。
修繕費、管理費、水道光熱費、固定資産税、ローンの返済金利などがランニングコストにあたります。
長期的にみると、ランニングコストはイニシャルコストを上回るため、ランニングコストの削減によって不動産投資のパフォーマンスを高めることも可能です。
ランニングコストは毎月どのぐらいかかる?
一般的に、不動産投資のランニングコストの目安は「家賃収入の20%」とされます。
もちろん、不動産によってランニングコストは変化します。
例えば、新築の不動産は設備が新しく、設備の更新や修繕にあまり費用がかかりません。
逆に中古の不動産は、設備の老朽化や間取り・デザインの陳腐化が起こりやすく、修繕費用を多めに見積もる必要があります。
家賃収入の20%で考えると、家賃収入の約80%が手元に残ります。
ただし、ローンを組んで不動産を購入した場合には、利益の大部分をローンの返済に充てることから、最終的な利益は家賃収入の10%程度になるのが一般的です。
不動産投資ランニングコストの費用と目安
不動産投資のランニングコストには、以下のようなものがあります。
- 管理委託費…不動産の管理を委託するための費用
- 修繕費…不動産の修繕にかかる費用
- 共用部の水道光熱費…不動産の共用部分の水道光熱費
- 入居者募集費用…入居者を募集するための費用
- 点検・清掃費…不動産の点検や清掃にかかる費用
- 損害保険料…火災や地震などの災害に備えるための保険料
- 所得税…不動産所得にかかる国税
- 住民税…不動産所得にかかる地方税
- 固定資産税…不動産の土地、建物にかかる国税
- 都市計画税…不動産の土地、建物にかかる地方税
これらのランニングコストについて、費用と目安をみていきましょう。
管理委託費
マンションやアパートに投資する場合、建物の管理は不動産管理会社に委託するのが一般的です。
管理委託費の目安は賃料の3~8%が目安で、ランニングコストに含まれます。
委託する管理業務には、PM業務とBM業務の2種類あります。
PM業務とはProperty Managementの略称であり、不動産の賃貸経営に関する管理業務です。
例えば入居者の募集、賃貸契約、入居者対応、賃料回収などがPM業務にあたります。
BM業務はBuilding Managementの略称であり、不動産の維持管理に関する業務です。
例えば、建物の清掃や設備の点検、警備や巡回などがあります。
管理会社に管理を委託することで、オーナーが自主的に管理する必要がなくなり、サラリーマンでも無理なく不動産投資に取り組むことができます。
修繕費
不動産の修繕費もランニングコストの一種です。
不動産の賃貸経営にはさまざまな修繕が必要になります。
例えば、修繕費には以下のようなものがあります。
- 入居者が退去した際の原状回復費用
- 設備の不具合や突発的な事故・災害が発生した際の補修費用
- 老朽化した設備の入れ替えやシロアリ対策などの予防修繕費用
- 建物の外壁塗装や屋上防水加工など、経年劣化に伴う大規模修繕費用
原状回復費用の一部は、敷金として入居者に転嫁することもできます。
不動産を長期にわたって所有する場合、定期的な大規模修繕に備えて修繕費用を積み立てておくことも重要です。
共用部の水道光熱費
マンションやアパートの共用部分で発生する水道光熱費もランニングコストです。
共用部分にはエントランス、階段、廊下、エレベーターなどがあります。
これらの共用部分には照明や自動ドアを設置するため、日々光熱費が発生します。
ランニングコストのなかでも、「水道光熱費は微々たるもの」といったイメージがあるかもしれません。
しかし、マンションの規模が大きい場合や、燃料費の高騰によって電気代が上がった場合などには、想像以上のランニングコストが発生します。
共用部分の水道光熱費を削減することで、不動産投資のパフォーマンス向上が期待できます。
入居者募集費用
不動産投資のリスクのなかでも、特に注意すべきは空室リスクです。
賃料を支払う入居者を確保できなければ、不動産を所有していても家賃収入を得ることはできません。
入居者を確保するためには、不動産管理会社に依頼して入居者を募集する必要があります。
この時、ランニングコストとして広告宣伝費や仲介手数料などの「入居者募集費用」がかかります。
入居者募集費用は、運用する不動産のタイプによってさまざまです。
例えばワンルームマンションなど、単身者向けの不動産は入居期間が短いため、入退去に伴う募集費用が高くなる傾向があります。
これに対し、ファミリー向けの不動産は入居期間が長く、入居者募集費用も比較的安くなります。
点検・清掃費
不動産を維持していくためには、設備の点検や共用部分の清掃が必要です。
不動産の点検には、法令で実施が定められている法定点検と、自主的に行う任意点検とがあります。
法定点検と任意点検の例は以下の通りです。
法定点検…建築設備定期検査、エレベーター定期検査、消防用設備点検、簡易専用水道管理状況検査、専用水道定期水質検査
任意点検…自動ドア点検、宅配ボックス点検、機械式駐車場点検
任意点検はオーナーでも可能ですが、法定点検は専門家に依頼して行うため点検費用がかかります。
また、共用部分の清掃、景観を保つための除草作業なども、外部に委託するのが一般的です。
損害保険料
損害保険料は、自然災害に備えるためのものです。
損害保険への加入は、法律で義務付けられているわけではありません。
しかし、万が一に備えるためにも、特に火災保険への加入は必須と考えましょう。
火災保険は、火災による損害だけではなく、台風や落雷、洪水・高潮・土砂崩れなどの水災も補償の対象です。
近年、水災が増加していることからも、火災保険への加入は必須といえます。
火災保険により、年間3〜5万円程度のランニングコストが発生します。
これにくわえて、地震保険への加入も重要です。
地震によって起こる損害は、地震保険によってのみ補償されます。
例えば、地震を原因とする火災や土砂崩れによる損害は、火災保険の補償対象外です。
自然災害に備えるためにも、火災保険と地震保険に加入しておくと安心です。
所得税
マンションやアパートや戸建てなど、不動産の種類に限らず、不動産所得を得た場合には所得税を支払わなければなりません。
所得税は、都道府県が課税する税金です。
したがって、所得税もランニングコストに含まれます。
サラリーマンなどが副業として不動産投資に取り組む場合、本業による給与収入と不動産投資による不動産所得をあわせて税率が決まります。
不動産所得は、年間の家賃収入の合計から必要経費を差し引いて計算します。
所得税は累進課税のため、課税所得が大きくなるほど所得税率も上がるのが特徴です。
なお、ランニングコストのうち、所得税は経費として計上できないため注意が必要です。
住民税
不動産投資によって不動産所得を得た場合には、地方自治体に住民税を収める必要があります。
住民税の税率も、他の副業や本業と不動産所得を合算して決まります。
所得税と住民税の大きな違いは、課税方式にあります。
所得税は課税所得に応じた累進課税であるのに対し、住民税の税率は課税所得に関係なく一定です。
住民税の税率は、都道府県民税4%と市区町村税6%の合計10%となります。
所得税と同じく、住民税の税率も経費計上できないランニングコストです。
固定資産税
固定資産税は、不動産を所有しているすべての人に課税される国税です。
納税義務は「1月1日時点での不動産の所有者」に課せられ、一括もしくは4分割で納付します。
固定資産税の計算式は、「固定資産税評価額×標準税率1.4%」です。
なお、年度の途中で不動産の所有者が変わった場合にも、納税義務者は変わらないため、1月1日時点での所有者が固定資産税を支払う必要があります。
もっとも、この場合には固定資産税を日割り清算し、引き渡し後から年度末までの固定資産税を、買主から売主に支払うのが一般的です。
所得税や住民税とは異なり、固定資産税は経費計上できるランニングコストです。
都市計画税
都市計画税は、都市計画事業や土地区画事業の費用に充てるための税金です。
投資する不動産が、都市計画法に基づく市街化区域内に位置する場合、固定資産税とあわせて都市計画税を納付する必要があります。
「市街化区域」について、都市計画法では「すでに市街地を形成している区域および、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定義しています。
市街化区域外の不動産に投資すれば、都市計画税を納める必要はありません。
都市計画税の計算式は、「固定資産税評価額×制限税率0.3%」です。
制限税率は、自治体によって異なる場合がありますが、0.3%を超えることはありません。
なお、都市計画税も経費計上できるランニングコストです。
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不動産投資でランニングコストを削減できる費用と対策
ランニングコストは、不動産投資の成果を左右します。
ランニングコストを削減すれば手元に残る利益が多くなり、手元資金が潤沢であるほど資金繰りは安定します。
ローンを返済できなくなるなど、突発的な出費で賃貸経営が破綻するリスクも低くなるのです。
ランニングコストのうち、削減しやすい費用は以下の5つです。
- 入居者募集費用
- 管理手数料
- 修繕費・リフォーム費
- 税金費用
- 保険料
それぞれのランニングコストについて、削減のコツをみていきましょう。
入居者募集費用
入居者募集にかかる主な費用は、広告宣伝費と仲介手数料です。
広告宣伝費は物件の宣伝にかかる費用であり、不動産会社によって大きく異なります。
そのなかから、広告宣伝費が安い不動産会社を選ぶことによって、入居者募集費用を削減できます。
また削減できる費用として、仲介手数料が挙げられます。
仲介手数料は、客付けを仲介した不動産会社に支払う手数料です。
法律の定める仲介手数料の上限は、「賃料1か月分+消費税」です。
これはあくまでも上限であり、不動産会社によって仲介手数料の設定は異なります。
したがって、仲介手数料が安い不動産会社を選ぶことも、入居者募集費用の削減に効果的です。
例えば、仲介手数料を「全額オーナーの負担」とする不動産会社から、「オーナーと入居者が50%ずつ負担」とする不動産会社に変えることで、入居者募集費用を大幅に削減できます。
管理手数料
管理手数料は管理会社によって異なります。
そのため、管理会社の選び方によって管理手数料を削減できます。
ポイントは、複数の管理会社から見積もりをとることです。
管理会社によって対応している業務は異なり、PM業務とBM業務の両方を請け負う業者もあれば、いずれか一方のみを請け負う業者もあります。
したがって、以下のようにいくつかのパターンで見積もりをとるのがポイントです。
- PM業務とBM業務を同時に委託できる管理会社から複数の見積もりをとる
- PM業務だけを委託できる管理会社から複数の見積もりをとる
- BM業務だけを委託できる管理会社から複数の見積もりをとる
見積もりの安い管理会社に依頼することで、管理手数料を削減できます。
場合によっては、PM業務とBM業務をそれぞれ別の業者に依頼することも可能です。
修繕費・リフォーム費
修繕費やリフォーム費も、ランニングコストの削減に適しています。
例えば、設備の買い替えには多額の修繕費が必要となるため、できるだけ買い替えることは避けたいものです。
そのためには、日常の点検や清掃が効果的です。
設備が完全に故障してから買い替えるよりも、定期的に点検や清掃を実施し、不具合が軽微なうちに修理することで買い替えを先延ばしできます。
点検・清掃にもコストがかかりますが、買い替える修繕費よりも安く済む場合が少なくありません。
リフォーム費も、削減しやすいランニングコストのひとつです。
ポイントは、リフォーム箇所の優先順位を明確化することです。
これにより、入居者募集に響く箇所を優先的にリフォームし、無駄なリフォームを省くことによって、リフォーム費を削減できます。
税金費用
ランニングコストを削減するならば、税金も抑えたいところです。
不動産投資にかかる税金のうち、固定資産税と都市計画税は削減できません。
ただし、所得税と住民税は削減できます。
すでに解説した通り、所得税と住民税は不動産所得とその他の所得の合計によって決まります。
サラリーマンの場合、本業の給与所得と不動産所得の損益通算が可能です。
ランニングコストや減価償却費を経費として計上し、不動産所得を圧縮することで所得税・住民税が安くなります。
不動産所得がマイナスの場合、マイナス分を給与所得から差し引くことによって、課税所得をさらに減らすことができます。
節税効果を最大化するために、税理士への依頼も検討してみましょう。
保険料
近年、損害保険料が高くなっています。
保険料そのものの値上げだけではなく、契約期間の短縮に伴う割引率の低下など、実質的な値上げも相次いでいる状況です。
考え方次第で、この流れをランニングコストの削減に役立てることができます。
確かに、火災保険の契約期間が最長10年から5年に短縮されたことで、割引率は低くなりました。
しかし、これを単に「保険料が高くなった」と考えるか、あるいは「契約を見直す機会が増えた」と考えるかによって大きな差が生じます。
契約を見直し、補償内容をアップデートすることによって、保険料を削減できる可能性があります。
また、契約更新の時期に合わせて複数の保険会社から見積もりを取得し、保険料が安い会社に乗り換えることも効果的です。
まとめ
この記事では、不動産投資とランニングコストの関係について詳しく解説しました。
ランニングコストは、不動産投資のパフォーマンスを左右する重要な要素です。
ランニングコストの削減に取り組めば、手元に残る利益を増やすことができます。
これは、実質利回りが高まること、延いては不動産投資のパフォーマンスが向上することにほかなりません。
当然ながら、資産規模をスピーディに増やすことにもつながり、早期リタイアも現実的になります。
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